動物の循環器
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心エコー図検査による健常成犬と重症度別僧帽弁閉鎖不全症の左心機能と血圧の比較
土井口 修坂田 美和子吉本 明美土井口 勝高橋 健松山 琢哉
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1997 年 30 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

動物病院に来院した1歳以上の健常成犬74頭を対照として,重症度に評価された僧帽弁閉鎖不全症の犬58頭につき,それぞれの心機能,特に収縮機能,拡張機能の評価と血圧測定を行った。その結果を以下に要約する。
1)僧帽弁閉鎖不全症では高度になるにつれてFSが増大した。このことは前方駆出量を増加させるため過収縮(hyperkinetic motion)が生じていることを示唆した。また高度の症例ではEFが減少する傾向が認められた。
2)高度の僧帽弁閉鎖不全症では,左房圧の上昇による拡張期の左房―左室圧較差の上昇が原因でE波の尖鋭化(Vmaxの増高)を示し,またA波では左室拡張末期圧の上昇による後負荷不整合(afterload mismatch)の結果,A波の減少をきたしA/E比の偽正常化(pseudonormalization)が生じた。
3)IVSdとLVPWdには大きな変化はないものの,LVIDdとLVIDsでは高度において著明な拡張が見られ,心不全への徴候が示唆された。
4)血圧では,高度な例においてEFの低下で示された前方駆出量の減少により,収縮期血圧および拡張期血圧ともに低下しているのが確認できた。
以上の成績から,犬においても僧帽弁閉鎖不全症において心エコー図を用いた心機能評価が臨床的に有用であることが明らかになった。

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