動物の循環器
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高脂血症がブタの右心房ペーシング負荷に対する心血管系反応に及ぼす影響
桑原 正貴菅野 茂
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1997 年 30 巻 1 号 p. 7-13

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抄録

ブタの冠循環動態を含めた心血管系機能の特性を明らかにするために,心筋虚血誘発法として虚血性心疾患の診断や実験に使用されている,右心房ペーシング負荷を行うことによって,冠循環を含めた心血行動態の反応に関して高脂肪食給与による影響に関して検討を加えた。セットアップ完了時の対照値は,高脂肪食群に比べて対照群の方が高値を示す傾向にあったが,いずれのパラメーターにも有意な差は認められなかった。ペーシングによる影響についてみると,MAPとLVSPは両群ともにペーシングによって低下する傾向が認められたが,その程度は高脂肪食群の方が大きかった。一方,LVdP/dt maxとCBFはペーシングによって初期には両群とも増加する傾向が認められたが,高脂肪食群ではその増加が小さく,しかもペーシング開始60-120秒後にはもとのレベルまで戻った。しかし,両群ともにいずれのパラメーターもペーシング前値に比べてペーシング中および終了後の値に有意な変化はみられなかった。
心臓の収縮力とそれに必要な基質およびエネルギーを運搬する冠血流量との間には密接な関係があると考えられることから,心収縮力(△%LVdP/dt max)と冠血流量(△%CBF)との相関関係をもとめた。対照群では有意な相関関係がみられが,高脂肪食群ではその様な関係は認められず,心臓の仕事量に相応する冠血流量が供給されていないことが示された。以上の結果から,高脂肪食を給与することによって冠循環に対する予備力が低下するために,右心房ペーシング等の負荷に対する心血管系の抵抗力が減弱するものと考えられた。

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