日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
多発外傷を合併した胸部大動脈急性解離に対してステントグラフト内挿術と開胸止血術を施行した1例
相良 大輔三岡 博海野 直樹犬塚 和徳石丸 啓
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2006 年 15 巻 1 号 p. 11-14

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抄録

多発外傷を合併した急性外傷性大動脈解離をmultidetector-row computed tomography (MDCT) で迅速に診断し, TPEG (transluminally placed endovascular grafting, ステントグラフト内挿術) と開胸止血術を施行し良好な経過を得た. 症例は70歳, 男性. 森林伐採作業中に転落し, APACHE III score 47の状態で当院に搬送された. MDCTで胸部下行大動脈から腹腔動脈起始部直前に至る急性外傷性大動脈解離, 両側血胸, 胸椎骨折, および外傷性くも膜下出血と診断. 第5胸椎 (Th5) からTh12の胸部下行大動脈をステントグラフトで被覆し, 胸椎々体骨折による右側血胸に対しては開胸止血術を行った. 術後経過は良好で対麻痺などの合併症は発生せず, 第44病日に退院した. 外傷性大血管損傷では多発外傷を有することが多く, MDCTは診断とTPEGの術前計画に有効であると思われた. 抗凝固薬の使用量が少なく, 合併する外傷の出血を助長しないという点から, TPEGは開胸下の人工血管置換術よりも低侵襲であり, 外傷性胸部大動脈損傷の急性期治療の一つとなりうると考えられた.

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