日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
重複大動脈瘤に対するハイブリッド手術
小櫃 由樹生重松 宏内山 裕智岩橋 徹中本 壽宏渡部 芳子槇村 進小泉 信達川口 聡
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2006 年 15 巻 2 号 p. 55-58

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抄録

重複大動脈瘤に対する低侵襲治療を目的として, 従来の人工血管置換術と経カテーテル的人工血管内挿術 (EVG: endovascular grafting) を組み合わせたハイブリッド手術を施行し, その手技と成績について検討した. 1995年以降に手術を行った胸部大動脈瘤766例 (外科手術 : 253, EVG : 513) のうち, ハイブリッド手術を行った重複大動脈瘤14例 (真性瘤 : 10, 真性瘤+解離 : 3, 解離 : 1) を対象とした. 手術は胸部下行・腹部の6例を一期的に, 他の8例を分割手術で行った. EVGはステンレス鋼製Z stentをポリエステル人工血管で被覆したステントグラフトを作成し, これを大腿動脈より目的部位に内挿した. 一期的手術6例は腹部大動脈置換術を行い, ステントグラフトを大腿動脈より胸部下行大動脈に内挿した. 分割手術8例における置換部位は1例の重複を含めた全弓部6例, 胸腹部3例で, ステントグラフトの内挿部位は胸部下行および胸腹部であった. 初回手術から二期的手術までの期間は2週間~1.8年で, 8例中5例の二期的手術を1カ月以内に行い得た. 先行手術が全弓部置換術であった5例では二期的EVGの際にelephant trunkを中枢側landing zoneとして利用した. 一期的に腹部置換とEVGを行った1例をMRSA感染にて失ったが, 他の13例の術後経過は良好で, 観察期間中 (術後1カ月~88カ月, 平均42カ月) に吻合部合併症やendoleak, migrationによる瘤径の拡大などを認めなかった. 外科手術とEVGを組み合わせたハイブリッド手術は重複大動脈瘤に対する一期的あるいは早期の二期的手術の低侵襲化を可能にし, 有効な方法であった.

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