日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
静脈血栓塞栓症例に対する周術期IVCフィルターの有用性の検討
出口 順夫宮原 拓也浦部 豪高山 利夫永吉 実紀子赤木 大輔山本 晃太木村 秀生重松 邦広重松 宏宮田 哲郎
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2006 年 15 巻 2 号 p. 59-63

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抄録

静脈血栓塞栓症 (VTE) は周術期における重大な合併症の一つであるがIVCフィルター (inferior Vena Cava filter) の周術期の予防効果については十分な検討がなされていない. 今回, 私たちは, 2003年1月1日より2005年12月31日まで当科に受診したVTE症例187例のうち, 術前に画像上VTEが確認され手術が施行された32症例 (IVCフィルター群 (F群, 永久型9, 一時型10, 計n=19), 非フィルター群 (NF群, n=13) を対象とし, 周術期合併症, 肺血栓塞栓の発生, および遠隔期の合併症を検討しIVCフィルターの肺塞栓予防効果について検討した. 平均年齢は58.5歳 (男7例, 女25例) で, 基礎疾患は, 婦人科疾患11, 一般外科疾患9, 整形外科疾患6, 泌尿器科疾患, 脳外科疾患, 形成外科疾患が各2であった. 術前D-dimer値と術前DVT分布より, 血栓の程度に差はないと考えられた. また, 手術時間, 出血量, 離床時期より両群間に手術侵襲は差がないと考えられた. 両群とも致死的合併症や抗凝固療法由来の合併症は発生しなかった. F群には, 挿入時PE1, 急性下大静脈閉塞1, 右房内migration1, 連結部破損1が発生していた. 遠隔期で, F群 (永久型) に肺梗塞1, IVC血栓閉塞2が認められた. 少数例の検討ではあるが, 術前からVTEを発症している症例について, IVCフィルターの有効性は認められなかった. 今後, エビデンスに基づいた厳密な適応の設定と, とくに一時型での製品の改善が必要と考えられた.

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