理科教育学研究
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原著論文
昆虫の同定に関する小学校教員の実態―文部省唱歌「虫のこえ」に登場する直翅目(バッタ目)について―
佐伯 英人
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2011 年 52 巻 2 号 p. 75-84

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抄録

本研究では、「虫のこえ」という歌に登場する昆虫を対象として、小学校教員が昆虫の姿を見たり、鳴き声を聞いたりして同定できるかどうかに関する知見を得ること、また、教員が昆虫の名前を知った時期や状況に関する知見を得ることを目的として調査・分析を行った。その結果、次の①~⑥ のことが明らかになった。① 教員が「虫のこえ」に登場する昆虫について一部(エンマコオロギTeleogryllus emmaとスズムシ Meloimorpha japonica)を除き、姿を見て同定することは難しい。また、すべての昆虫で鳴き声を聞いて同定することは難しい。② 男性教員と女性教員で「昆虫の姿を見たり、鳴き声を聞いたりして同定できるかどうか」に有意な差がみられなかった。③ 教員の年齢と「昆虫の姿を見たり、嗚き声を聞いたりして同定できるかどうか」にほとんど相関がなかった。④ 教員の幼少期の昆虫に対する興味と「昆虫の姿を見て同定できるかどうか」に弱い正の相関があった。一方、教員の幼少期の昆虫に対する興味と「昆虫の嗚き声を聞いて同定できるかどうか」にほとんど相関がなかった。⑤ 教員がコオロギ類 (Cricket:Grllidae)を知った時期は小学校就学時、または、小学校就学前であり、親など身近な人から教えてもらって知る場合が多い。状況としては、前述の人々から、草むらや庭など身近な楊所で、コオロギ類をつかまえたり、見つけたりしたときに教えてもらっていた。⑥ 教員がスズムシを知った時期は主に小学校就学時であり、親など身近な人から教えてもらって知る場合が多い。状況としては、自然の中でつかまえたり、見つけたりしたときではなく、スズムシを飼育している場合が多かった。

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© 2011 日本理科教育学会
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