2006 年 15 巻 4 号 p. 415-420
【背景】末梢吻合のフローパターンはその三次元形状によって影響をうける. 大腿膝窩動脈バイパスの末梢吻合部におけるカフ付き吻合の流体力学的な効果をコンピュータ流体力学 (CFD) で評価した. 【方法】カフ付き吻合を作製し, その三次元形状を3D digital subtraction angiography (DSA) で調査した. カフ付き吻合にはDistaflo (Bard Peripheral Vascular™, Tempe, Phoenix) を使用した. 吻合部床の血管病変の個体差などの影響を少なくするために, 標準型吻合は, 同一な吻合面が全く等しくなるものと仮定して, 仮想標準型吻合を作製し, 比較のために使用した. 両者とも末梢での血流の分配比は足側 : 頭側=100 : 0と仮定した. CFDで得られる血流波形とシネアンギオグラフィーでの血流波形を解析した. 【結果】計算された流速ベクトルはシネアンギオグラフィーで可視化された血流とほぼ同一であった. カフ付き吻合は生体血管床の壁ずり応力を増加させた. 【結論】3D DSAを使用したCFD分析は症例特有の局所の流体力学を再現しうるものと考えられた.