2006 年 15 巻 4 号 p. 421-426
【目的】岩手県における末梢動脈疾患 (PAD) に対する下肢切断症例の疫学について3年にわたる実態調査を行った. 【対象および方法】岩手県 (人口約140万人) で外科, 心臓血管外科, 整形外科, 形成外科のいずれかを標榜する72施設に対し2002年から2004年の単年ごとに質問票を郵送し, 前年に施行された下肢切断術の調査を行った. 【結果】回収率は88.6%で, 2001年から2003年の3年間に施行された下肢切断症例数は155例 (男118例) で, 平均年齢は73.0歳であった. 人口10万人あたり年間の症例数は3.7例で, 加齢とともに大腿切断の発生率が増加した. 併存疾患は糖尿病が46.8%と最も多く, 閉塞性動脈硬化症が83.2%を占めた. 臨床所見は潰瘍または壊疽が98.6%, 安静時疼痛42.1%であった. 切断術は161肢に施行され, 大腿切断が61.5%と高率であった. 全身的合併症の発生率は大腿および下腿が足関節以下に比し有意に高率であった. 創部合併症は12.4%に認め, 再切断率は5.2%であった. 病院死亡率は21.9%で, とくに大腿切断23.6%, 下腿切断36.3%と手術成績はきわめて不良であった. 【結語】PADに対する切断術の手術成績は不良であり, 高リスク症例が多いことが示唆された. 重症虚血肢の早期発見と基礎疾患の治療が重要であると考えられた.