抄録
術前に種々のリスクを有した胸腹部大動脈瘤4症例に対し, 手術の低侵襲化を図る目的で腹腔分枝再建を併用したステントグラフト内挿術を施行した. 手術は, まず開腹して腹腔分枝再建を行い, その後一期的または二期的にステントグラフト内挿術を施行した. その結果, 一期的に施行した2例はともに手術時間が長時間となり, 1例を急性膵炎で失い, 他の1例は不全対麻痺を発症した. 二期的に施行した2例は, ともに経過良好で, 脊髄合併症も認めず退院した. 胸腹部大動脈瘤に対し, 腹腔分枝再建を併用したステントグラフト内挿術は, 従来の術式と比べて手術の低侵襲化が可能であるが, ハイリスク症例においては, それぞれの手術を二期的に施行するのが望ましい.