日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腸骨動脈完全閉塞症例にたいする血管内治療
今村 敦大久保 遊平田中 宏典尾崎 岳奥野 雅史斉藤 隆道山田 斉高田 秀穂上山 泰男
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2006 年 15 巻 7 号 p. 603-610

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抄録
閉塞性動脈硬化症 (peripheral arterial disease; PAD) にたいする血管内治療 (endovascular therapy; EVT) はメタリックステントの出現により治療適応の拡大がなされ, 近年では単純な腸骨動脈狭窄病変にたいして外科的バイパス手術に代わる治療として治療戦略上で重要な位置を占めるようになった. しかし, 慢性閉塞 (chronic total occlusion; CTO) 病変にたいする治療は統一した見解が得られていないのが現状である. 今回, われわれは腸骨動脈CTOでTASC-C, D病変に相当する症例に積極的なEVTを行い良好な成績が得られたので報告する. 1997年7月~2006年4月の間に腸骨動脈PAD 171症例, 218病変にたいしてEVTを行い, CTOで腹部大動脈, 総大腿動脈に病変を認めない60症例, 61病変を対象とした. 症例の内訳は男性51人, 女性9人, 平均年齢は70歳であった. 閉塞長の平均は8.6cm, 治療の初期成功率は80%で49病変に加療を行った. 合併症は急性血栓閉塞, 脳梗塞, 遠位塞栓症を各1例認めた. 再狭窄・閉塞は9例に認められた. 最終的に2例にたいしてEVTの継続は困難と判断しバイパス術を施行した. 一次開存率は1年89%, 3年74%, 5年59%, 二次は1年100%, 3年92%, 5年92%であった. 腸骨動脈CTOにたいするEVTは, 初期成功率, 一次開存率はバイパス手術と比較して劣るも二次開存率は良好で, 低侵襲で早期の社会復帰が可能などの優位性を考えれば, この領域での治療選択肢の一つとなり得ると考えられた.
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