2006 年 15 巻 7 号 p. 619-623
症例は71歳, 男性. 直腸癌に対する低位前方切除術の既往を有しており, 腹部CT検査で腹部大動脈瘤を指摘されていたが, 瘤径が最大53mmと増大傾向のため手術目的で入院となった. 瘤は腎動脈上より瘤状変化を呈し, 腹部大動脈造影では, 下腸間膜動脈は描出されず, また左内腸骨動脈は閉塞していた. 陳旧性心筋梗塞を伴う冠動脈3枝病変を合併しており, まず冠動脈バイパス術 (2枝) を行い, 続いて43日後, 腹部大動脈瘤に対し, 両側腎動脈再建を伴うYグラフト置換術を施行した. 術後1日目腸管虚血を発症したため左半結腸切除, 人工肛門造設術を行った. 術後127日目に軽快退院した. 結腸手術の既往は, 腹部大動脈瘤手術の際, 術後腸管虚血発症の危険因子と考えられ, かかる症例においては, 発症予防のための術前検査と周術期の注意深い管理が肝要であると考えられる.