日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
閉塞性動脈硬化症の長期生命予後からみた大動脈腸骨動脈病変に対する術式別の適応と成績
正木 久男田淵 篤柚木 靖弘久保 陽司濱中 荘平稲垣 英一郎種本 和雄
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2007 年 16 巻 1 号 p. 23-29

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抄録

1976年 1 月から2005年 5 月までに当科で治療した大動脈腸骨動脈病変を有する下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)のうち,大動脈大腿動脈バイパス(A-FないしA-biF:A群)319例345肢,大腿大腿動脈交叉バイパス(F-F:B群)88例88肢,腋窩両側大腿動脈バイパス(Ax-biF:C群)44例60肢,血管内治療71例80肢(PTA,stent:D群)を対象とし,それぞれの治療法につき長期成績を検討した.術式の選択は,全身状態良好な症例には,A-FないしA-biF,全身状態不良な症例や75歳以上の高齢者で片側病変にはF-F,両側病変にはAx-biFを選択し,全周性に石灰化がない限局性病変には血管内治療を選択した.平均年齢はA群66歳,B群73歳,C群71歳,D群68歳で,B,C群はA,D群に比べて有意に高齢であった.術前合併症では,1 人あたりに占める合併症では,A群はB群,C群に比較して有意に低かった.病院死亡率はA群 7 例(2.2%),B群 3 例(3.4%),C群 4 例(9.1%),D群 0 例(0%)でA群はC群に比較して有意に低かった.B,C群間には有意の差はなかった.累積開存率はA群 5 年91%,10年86%,B群 5 年73%,10年73%,C群 5 年44%,10年44%,D群 5 年83%で,A群が最もよく,次いでD,B,C群の順であった.年齢,性別をほぼ同等にした累積生存率は,5 年でA群82%,B群60%,C群38%,D群80%,10年でA群54%,B群60%,C群 0%で,5 年では,A群はB,C群に比べて有意に高かった.A,D群間には有意の差はなかった.2007年にTASC II が発表される予定であり,それとともに血管内治療の適応の拡大が予想されるが,現時点では,生命予後および治療成績から,われわれの術式選択は妥当と考えられた.

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