抄録
症例は67歳,男性.上腹部痛を主訴に当院を受診.ショック症状なし.左上腹部に軽度の圧痛を認め,胃内視鏡検査にて胃噴門後壁に手拳大の腫瘤様病変を発見された.CT検査では,径27 × 38mmの脾動脈瘤を認め胃と瘻孔を形成しており,胃内視鏡検査での腫瘤性病変は動脈瘤内の血栓と考えられた.すなわち切迫破裂した脾動脈瘤が胃と瘻孔を形成したものの,大出血を来すことなく安定した血行動態で経過しているものと思われた.発熱もあり動脈瘤への感染が疑われたため準緊急的に手術を施行した.手術は脾動脈を根部で結紮し摘脾を行い,瘤壁の癒着の強い部分は周囲組織への損傷を避けるべく切除せず大網を被覆してドレナージを行った.胃との瘻孔は大きく食道近傍であったため,胃部分切除で対処できず胃全摘術を要しRoux-Yにて再建した.術後,発熱は軽快し合併症なく経過した.血行動態の安定した稀な脾動脈瘤-胃瘻を経験したので報告する.