日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
開心術後遠隔期に発症したStanford A型大動脈解離に対する手術の検討
西野 貴子佐賀 俊彦松本 光史金田 敏夫岡本 健井村 正人中本 進札 琢磨藤井 公輔
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2007 年 16 巻 6 号 p. 735-740

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抄録

開心術後遠隔期におけるStanford A型大動脈解離の発症は比較的まれであるが,現在においても重篤な術後合併症の一つである.本症に対して手術を行った自験例を対象に手術時の上行大動脈径や,高血圧症などの発症要因,早期成績について検討した.1992年 1 月から2005年12月までに開心術後遠隔期にStanford A型大動脈解離を発症し,手術を施行した自験例は 5 例であった.初回手術は大動脈弁置換術:2 例,冠動脈バイパス術:2 例,Bentall手術:1 例で,初回手術から大動脈解離の発症までの平均期間は7.7年であっ た.手術術式は上行置換術:4 例,弓部置換術:1 例で,初回手術で冠動脈バイパス術を施行した症例は,再冠血行再建を同時に施行した.早期死亡はなく,遠隔期に 1 例が肺炎で死亡した.開心術後の大動脈解離発症の最大危険因子は上行大動脈径であるという報告が ある.初回手術時に大動脈の菲薄化や脆弱性を認めた例には,術後長期にわたって,上行大動脈径を厳格に経過観察する必要がある.初回手術時に大動脈径が40mm以上で,前述した危険因子を認めた例には,積極的に上行置換術を同時に行い,拡大放置例で術後経過中に50mm以上の拡大を認めた場合には,待機的な再手術を積極的に考慮する必要がある.

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