日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
冠動脈疾患を合併した腹部大動脈瘤の外科治療
尾崎 喜就向原 伸彦吉田 正人本多 祐金 賢一溝口 和博圓尾 文子志田 力
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2007 年 16 巻 7 号 p. 785-790

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抄録

【背景】腹部大動脈瘤(AAA)と冠動脈病変(CAD)の合併は比較的多く,その治療方針は症例に大きな影響を与える.CADとAAA合併例の手術成績からその評価を行った.【方法】2002年 1 月から2006年 4 月までの緊急例を除いた単独冠動脈バイパス手術(CABG)は323例で,AAA手術は317例であった.CADおよびAAAの両者に対して治療を行ったのは39例で,男性33例,女性 6 例,年齢は74 ± 7.2歳であった.AAAの径(瘤径)が55mm以上,もしくは左前下行枝近位部病変を合併する場合は同時手術とし,その他はCABGを先に行うか,AAA手術の前後に経皮的冠動脈形成術(PCI)を行うこととした.同時手術例(同時手術群)は22例で,CABGをAAA手術に先行して行った症例(CABG先行群)は 8 例,AAA手術の前後にPCIを行った(PCI合併群)のは 9 例であった.同時手術群のCABGの術式は,OPCAB 14例,MIDCAB 8 例であった.CABG先行群では術後平均6.3 ± 4.5週(3~16週)でAAA手術を行った.PCI合併群ではAAA手術前に 6 例,術後に 3 例でPCIを行った.これら 3 群について,術前,術中,術後因子の比較検討を行った.追跡期間は1.7 ± 1.2年(2 週~3.9年)であった.【結果】手術死亡は 1 例(2.6%)で,同時手術例であった.生存38例における術後合併症は 3 群間で差はなかった.CADの治療をAAA手術に先行して行った症例において,周術期にAAA破裂などの合併症は見られなかった.【結論】CADとAAA合併例に対して,適切に外科治療を選択することにより,良好な手術成績が得られた.

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