抄録
症例は51歳,男性.左胸部を強打し来院した.来院時,左橈骨動脈の拍動は触知できなかったが,血流はドップラー聴診器にて聴取された.胸部造影CT上,左鎖骨下動脈の周囲に血腫が存在し,鎖骨下動脈損傷による出血が疑われたため,緊急血管造影を施行した.左鎖骨下動脈は起始部より約 3cmで閉塞し,左上肢末梢への血流は左椎骨動脈から逆行性に供給されていた.造影剤の血管外漏出はなかった.出血はなく,左手末梢への血流も保たれているため,経過観察とした.鎖骨下動脈盗血症候群を来した場合には,血行再建術が必要であると考えていたが,症状は出現しなかった.現在,発症後 2 年経過しているが,外来にて経過観察中である.鎖骨下動脈盗血現象がみられた外傷性鎖骨下動脈閉塞に対し,保存的治療を選択できた稀な 1 例を経験したので報告する.