日本血管外科学会雑誌
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症例
腹部大動脈人工血管手術後遠隔期に発生した大動脈-腸管瘻の 2 例
渡辺 俊明中島 昌道平山 亮
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2008 年 17 巻 3 号 p. 447-451

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抄録
【目的】腹部大動脈人工血管手術後の大動脈-腸管瘻は知られた合併症であるがその発生は比較的稀である.術後遠隔期に発生した 2 例を同時期に経験したので報告する.【症例】症例 1:64歳,男性.腹部大動脈閉塞に対し平成15年 4 月に他院で腹部大動脈-両側外腸骨動脈人工血管バイパス術を受けた.平成17年 8 月 2 日より腹痛・下血を認め,同院で消化管精査を受けるも異常を認めず,8 月19日に再び下血を認め当院受診,8 月31日に大量吐下血ありショックとなった.CTを施行したところ消化管内に造影剤の流出あり大動脈-腸管瘻と診断され緊急手術(腹部大動脈-人工血管再吻合)を行った.症例 2:55歳,男性.腹部大動脈瘤に対し平成 7 年10月に他院で腹部大動脈人工血管置換術を受けた.平成17年 7 月22日に腹痛・下血を認め当院受診,消化管精査では明らかな異常はなかった.8 月27日に再度下血あり大動脈-腸管瘻を疑われ 9 月 2 日に緊急手術(腹部大動脈人工血管置換術)を行った.【結論】腹部大動脈の人工血管手術後に原因不明の消化管出血をきたした際には,大動脈-腸管瘻を疑う必要がある.画像検査での診断確定はしばしば困難であり,大量出血の可能性があるため早期に手術治療を考慮する必要がある.
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