2008 年 17 巻 4 号 p. 501-504
腹腔動脈瘤は比較的稀な疾患であるが,破裂をきたせばショック等の重篤な病態を招く危険がある.嚢状動脈瘤に対して瘤切除,腹部大動脈-脾動脈-総肝動脈バイパスを施行した症例を経験した.症例は50歳,男性であり,既往歴として17歳のときに十二指腸潰瘍にて胃切除術施行していた.腹痛を認め,CTスキャンを施行し腹腔動脈瘤を指摘された.血液検査所見にとくに異常を認めなかったが,ツベルクリン反応は強陽性であった.Gaスキャンにて動脈瘤に一致して集積を認めた.手術は開腹にて腹腔動脈根部で結紮し,瘤を切除した.大伏在静脈を用いて腎動脈分枝より末梢の大動脈から脾動脈に端側,総肝動脈に端端に吻合し,バイパスを施行した.摘出された腹腔動脈瘤は最大横径23mmであり,解離性と診断された.腹腔動脈瘤は症例ごとの的確な診断,治療方法の選択,手術適応,術式の選択が重要と思われた