日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
ePTFE人工血管を使用した腹部大動脈瘤手術の成績
古川 浩小西 敏雄深田 睦
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ジャーナル オープンアクセス

2009 年 18 巻 1 号 p. 9-16

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抄録

【背景】Expanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)人工血管は被覆人工血管と比較し術後の炎症反応再燃が少ないことを期待し,腹部大動脈瘤(AAA)手術に使用した.【方法】1998年 5 月から2006年 9 月までのAAA手術138例(緊急21例,男性116例,平均年齢70.9歳)を対象とし,周術期炎症反応と遠隔期画像検査とを比較した.【結果】手術死亡は 4 例,在院死は 1 例あり,いずれも破裂緊急例であった.重症な合併症としてS状結腸壊死が緊急の 1 例に発生したが,術後の腹腔内圧上昇に起因する腹部コンパートメント症候群が原因であった.緊急例を除いた同種血輸血率は18.8%に留まり止血性は良好であった.術後の体温と白血球数は第 1 病日(37.7℃,9400 / mm3)をピークに,CRPは第 4 病日の14.4mg / dlをピークに,以後漸減した.いずれにも再燃を思わせる二相性の推移は観察されなかった.遠隔期(平均1180日)の画像検索にて,外腸骨動脈および内腸骨動脈を再建した人工血管の開存率はそれぞれ,96.3%,および87.9%と良好であり,内腸骨動脈瘤発生を 2 例にのみ認めた.その他に,グラフト周囲漿液腫を10例に認め,1 例に開腹し除去術を行った.【結論】ePTFE人工血管は,術後の炎症反応再燃がなく,遠隔期開存率も良好である一方,グラフト周囲漿液腫が生じやすい可能性がある.

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