抄録
【背景】われわれは破裂性腹部大動脈瘤(RAAA)の予後因子としてRutherford分類レベル3,4(R3,R4)が高感度の指標であることを報告してきた.今回はR3,R4に対する当科の治療戦略および治療成績について報告する.【方法】RAAAで手術を施行した前期(1996~2000年)18例と後期(2001~2007年)30例のうち,重症ショックを呈した前期R3,R4の 6 例,後期R3,R4の14例について,在院死亡率,死亡原因,術後合併症を比較検討した.後期R3,R4の治療戦略として,胸部下行大動脈遮断を 9 例(64.3%),abdominal compartment syndrome(ACS)回避のための腹壁仮閉鎖を12例(85.7%)に行った.腹壁仮閉鎖は 2 例に皮膚のみ縫合閉鎖,2 例にラテックスと皮膚を縫合,2 例にラテックス上にvacuum-assisted closure(VAC)techniqueを併用し,最近の 6 例はVAC techniqueのみで仮閉鎖した.【結果】R3,R4の在院死亡は前期 4 例(66.7%)から後期 2 例(14.3%)と有意に低下した(P = 0.019).術後合併症は前期の腎不全 4 例(66.7%),結腸壊死 3 例(50%)に対して,後期はいずれもみられなかった(P = 0.001,P = 0.007).死亡原因は前期がショック離脱不能のlow cardiac output syndrome(LOS)2 例,結腸壊死,腎不全からの多臓器不全 2 例で,後期の 2 例はLOSであった.【結論】胸部下行大動脈遮断,ACS回避の腹壁仮閉鎖は,重症ショックを呈する破裂性腹部大動脈瘤の救命率向上へ有効な治療戦略であることが示唆された.