日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
急性大動脈解離術後における塩酸ランジオロールの心房細動抑制効果についての検討
森嶌 淳友平尾 慎吾長阪 重雄横山 晋也金田 幸三西脇 登
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2009 年 18 巻 4 号 p. 481-485

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抄録

【背景】急性大動脈解離術後に心房細動を発症し治療にしばしば難渋することがある.われわれは急性大動脈解離術後に塩酸ランジオロール(オノアクト®)を低用量持続投与し,術後の心房細動抑制効果について比較検討を行った.【方法】2005年 4 月~2008年 3 月で,急性大動脈解離に対して手術を施行された75人のうち,塩酸ランジオロール投与群をO群25人,塩酸ランジオロール非投与群をN群50人とした.術後24時間以降塩酸ランジオロールを0.05mg / kg / minで投与開始し術後120時間後には終了とした.投与期間中の心拍数,血圧,心係数の変動,心房細動発生頻度,合併症について評価した.なお心房細動発生頻度に関しては術後120時間以降退院するまで観察した.【結果】術後120時間までの心房細動発生頻度はN群で48%(50例中24例),O群では16%(25例中 4 例)であった(p < 0.01).入院中の心房細動発生頻度はN群で52%(50例中26例),O群では28%(25例中 7 例)であった.またO群での心房細動発症例について持続投与中は頻脈になることはなかった.合併症は徐脈,房室ブロック 1 例を認めた.塩酸ランジオロール投与終了後,経口β遮断薬に切り替えていた18例はすべて心房細動を発症しなかった.【結論】塩酸ランジオロールの低容量持続投与にて急性大動脈解離術後の心房細動発症が有意に抑制される結果であった.持続投与終了後も心房細動が抑制される傾向にあり,β遮断薬の内服によりさらに心房細動抑制効果が持続されると思われた.また心房細動発症例においても頻脈をおさえ血行動態を安定させることに寄与できると思われた.

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