日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腸骨動脈の血管内治療併用ハイブリッド血行再建術の背景因子検討
安原 洋服部 隆司重田 治
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ジャーナル オープンアクセス

2009 年 18 巻 4 号 p. 487-493

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抄録

【目的】大動脈・腸骨動脈領域の閉塞性動脈硬化症で,末梢病変が混在する症例には,かつて多分節血行再建術が行われてきた.しかし最近では,腸骨動脈病変にPTA / ステント留置術を併用する低侵襲バイパス術,すなわちハイブリッド手術が標準術式となり つつある.大動脈・腸骨動脈病変を有する閉塞性動脈硬化症の背景を検討することで, ハイブリッド手術の効用を明らかにし,厳格な手術適応の決定が可能である.【対象と方法】1998~2006年に治療した閉塞性動脈硬化症347例のうち,大動脈・腸骨動脈病変を有する144例を対象にした.対象例の病変部位の内訳は,大動脈・腸骨動脈領域に病変が存在し,末梢病変が分節的な100例,大動脈から膝下動脈末梢まで病変が広範に存在する44例であった.対象例の平均年齢は69歳,男 / 女別は120例 / 24例で,79例(55%)が重症虚血肢,34例(24%)は透析例であった.【結果】血行再建術は74例で行われ,血管内治療不使用のバイパス術47例,腸骨動脈PTA / ステント留置術のみ10例,ハイブリッド血行再建術17例であった.ハイブリッド血行再建術の内訳は,腸骨動脈PTA / ステント留置術 + 大腿交差バイパス術10例,腸骨動脈PTA / ステント留置術 + in-situ大腿-膝窩動脈バイパス術 7 例で,血管内治療不使用のバイパス術のうち,開腹例は17例で,開腹下の大動脈-大腿動脈バイパス術例では,術後呼吸器合併症が明らかに高率であった.分節型病変例と広範型病変例とを比較すると,両群間に年齢,性差,糖尿病,高血圧,虚血性心疾患既往合併頻度の差はなく,広範型病変例では,透析治療(39% vs. 17%;P < 0.01),脳血管障害既往(59% vs. 41%;P < 0.05),重症肢虚血(93% vs. 38%;P < 0.01),大切断(48% vs. 4%;P < 0.01)の頻度が高かった.生命予後は,広範型病変例で明らかに不良であった(log-rank test;P < 0.0001).【考察とまとめ】大動脈・腸骨動脈領域閉塞性動脈硬化症でハイブリッド手術の適応となる症例群は一様ではないが,背景の動脈硬化因子が重篤な広範型病変例でもハイブリッド血行再建術は十分に適応可能な術式と考えられた.

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