抄録
【背景】Open stent法を用いた遠位弓部大動脈瘤術後のType I のendoleakに対してthoracic endovascular aortic repair(TEVAR)を施行した 2 例を経験し良好な結果であったので報告する.【症例】症例 1 は80歳代の男性.大動脈弁閉鎖不全および遠位弓部大動脈瘤に対して,大動脈弁置換術とopen stent法による上行弓部大動脈置換術を施行した.6 カ月後のfollow up CTで,Type I のendoleakが出現した.症例 2 は60歳代の男性.以前急性大動脈解離に対して全弓部置換術が施行されていた.4 年後のCTで吻合部仮性瘤が認められ,open stent法を用いた人工血管置換術と下行大動脈より起始異常していた右鎖骨下動脈再建術を施行した.術後inclusion法で行った遠位側吻合部から瘤内へのリークを認めたため,遠位側吻合部の離断・再吻合術を施行した.その 1 年後のfollow up CTでステントグラフト留置部のType I endoleakが出現し,瘤径の増大が見られた.【結果】症例 1,2 ともにTEVAR 6 カ月後のCTで,endoleakは完全に消失し動脈瘤は血栓化していた.しかながら症例 1 では,1 年後のCTでTEVARステントグラフトが尾側に移動しType I のendoleakが再発したため,再度TEVARを施行した.その後はendoleakなく経過良好である.また,症例 1,2 ともにTEVARに関する合併症は認めなかった.【結論】Open stent法を用いた遠位弓部大動脈瘤術後のType I のendoleakに対してTEVARを行った.TEVARは低侵襲かつ安全であり,再手術の困難が予想される症例において有用な選択肢であると思われた.