抄録
腹部大動脈人工血管感染は予後の悪い合併症である.胃癌術後のMRSA腹部人工血管感染に対して,ドレナージ術および洗浄を行い,二期的に人工血管除去,e-PTFE人工血管による解剖学的再建を施行し右腹直筋弁充填術を行い良好な結果が得られたので報告する.症例は66歳,男性.胃癌術後の腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術が行われ,約 3 カ月してMRSA人工血管感染を発症した.ドレナージ術および強酸性水にて洗浄を 2 カ月間施行したが,無菌化することができず人工血管除去,e-PTFE人工血管による解剖学的再建を行った.胃癌術後のため有茎大網充填が不可能で,さらに左腹直筋が離断されていたので,右有茎腹直筋弁充填術を施行した.術後経過は良好で,術後 1 年11カ月を経過したが感染の再燃は認めていない.大網が使用できない場合は腹直筋がそれに代わる充填物として有用であると思われた.