抄録
症例は69歳,女性.3 カ月前に胸背部痛あり,急性A型解離および胸部大動脈から腹部大動脈にかけての動脈瘤(Mega aorta)を指摘された.二期的手術を行うこととなり,1 カ月前にelephant trunkを伴う弓部全置換術および腹部大動脈人工血管置換術を施行された.今回残存する胸腹部大動脈瘤(最大短径62mm)に対して人工血管置換術を行った.術後脊髄障害のリスクが高いと考えられたため術中は運動誘発電位(MEP)のモニターを行うなど,脊髄保護に留意して手術を行った.大動脈遮断中にMEPが消失し,脊髄虚血を示したため,末梢側灌流圧を高く維持することや迅速に肋間動脈再建することで,脊髄虚血障害の軽減を図った.術後脊髄障害をきたすことなく術後20日で退院した.