抄録
症例は72歳,女性.突然の激しい胸背部痛をきたしショック状態で救急搬入された.上行大動脈瘤破裂,心タンポナーデと診断し緊急手術を行った.手術所見でsino-tubular junctionから約3 cm末梢側に径3 cm大の嚢状仮性動脈瘤を認め,瘤下縁で動脈瘤が穿破し血腫を形成していた.穿破部位の右面頭側に膿瘍腔形成を認め,この時点で感染性動脈瘤と判明した.上行大動脈を遮断し,限局した仮性動脈瘤壁を可能な限り含む形で上行大動脈を約3 cm幅で輪状に切除し直接吻合を行った.大量の弱酸性水とゲンタシン生食で洗浄し手術を終了した.術中提出した膿瘍,大動脈壁,右房前面血腫から肺炎球菌が検出された.術後3週間で軽快退院した.抗生物質投与を術後12週間継続した.