日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
胸部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の適応拡大のための工夫と成績
金岡 祐司大木 隆生戸谷 直樹石田 厚立原 啓正平山 茂樹黒澤 弘二墨 誠太田 裕貴金子 健二郎
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2010 年 19 巻 4 号 p. 547-555

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抄録

【はじめに】胸部大動脈瘤(TAA)におけるステントグラフト治療(TEVAR)について検討した.【対象と結果】2006年6月からTAG胸部大動脈ステントグラフト(W. L. Gore & Associates, Inc., Flagstaff, Arizona, USA)(以下TAG)が保険収載されるまでの2年間にTAAでopen repair困難とされた症例65例に対してTAG 80個を用いてTEVARを行った(破裂8例を除く).男性49例,女性16例で,胸部下行大動脈瘤が45例,弓部および遠位弓部大動脈瘤が20例であった.胸部下行の45例はTEVARのみで治療可能であった.弓部大動脈瘤の3例で左総頸動脈ぎりぎりにTAGをdeployするために経皮的に頸動脈を穿刺して0.018"のワイヤを上行大動脈に挿入してTAGをdeployした(carotid puncture wire protection).5例は胸骨正中切開で上行大動脈より頸部分枝の再建を施行した後に,3例は頸部分枝間のバイパス後にTEVARを行った(同時手術).また上行大動脈も拡大していた3例は弓部置換+elephant trunkを先行し,1~3カ月後にTEVARを行った.弓部TEVAR後の1例に心筋梗塞による突然死,1例に上行大動脈解離,total debranchingの1例に脳梗塞を認めた.また,弓部の2例でエンドリークを認めた.【まとめ】胸部下行大動脈瘤に対するTEVARの成績は非常に良好であったのに対し弓部を含む大動脈瘤は左鎖骨下動脈をcoverしてもTEVARのみでは対応できない場合が多くみられた.Debranching,弓部置換+elephant trunkなどの外科手術と組み合わせることにより適応はさらに広がったもののその成績は未だ改善の余地があると思われた.

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