2010 年 19 巻 5 号 p. 625-629
人工血管感染に対する人工血管の温存は困難であり,感染人工血管を摘除することが必要である.今回,われわれは人工血管感染に対しドレナージ術とgentian violet洗浄にて感染が軽快した2例を経験した.症例1は79歳,男性.閉塞性動脈硬化症に対するバイパス術後の尿管狭窄に対し尿管ステントを留置したが,MRSA陽性の尿が後腹膜腔に漏出しその20カ月後に人工血管感染となった.症例2は65歳,男性.腹部大動脈瘤切除人工血管置換術の既往があり,維持透析中だった.透析用の人工血管内シャントがMRSA感染し,その5カ月後に腹部人工血管感染となった.吻合部に感染の波及がなく,解剖学的に人工血管摘除が適さない場合や全身状態が不良な症例ではMRSA感染でもドレナージ術およびgentian violet洗浄により人工血管を温存したままで軽快しうることが示唆された.