2010 年 19 巻 5 号 p. 631-637
孤立性内腸骨動脈瘤は稀で,破裂が多くその死亡率は高い.今回下腹部腹直筋鞘内血腫を呈した破裂例を経験し,診断に難渋したので報告する.症例1は77歳男性,下腹部痛で発症,CT検査で右孤立性内腸骨動脈瘤と,下腹部腹直筋下腹膜外から膀胱に接し骨盤内右後腹膜腔までの血腫を認めた.瘤周囲に血腫はなく破裂の確定診断には至らないも,貧血進行のため2日目に試験開腹術を施行した.瘤底部での破裂と判明し瘤内より血流遮断後縫縮術を施行したが,術後肺炎合併し死亡した.症例2は76歳男性,下腹部痛で発症,CT検査で左孤立性内腸骨動脈瘤と周囲に少量の血腫,下腹部腹直筋鞘内血腫を認め破裂と診断,瘤内より血流遮断後縫縮術を行い,合併症なく退院した.動脈瘤で周囲に血腫を伴わない非典型例では,破裂の診断に窮することがある.しかし破裂例の救命率向上には迅速な診断と適切な治療が必要であり,臨床像で瘤破裂を疑うなら試験開腹術も必要である.