日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
II型急性大動脈解離に対する上行置換術周術期に発症したIII型解離の1例
寺本 慎男藤井 毅郎塩野 則次益原 大志小山 信彌渡邉 善則
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2010 年 19 巻 6 号 p. 695-699

詳細
抄録

心大血管手術周術期の大動脈解離は,急性発症や手術操作に関与するさまざまな因子が原因で発症する.症例は59歳女性,突然の心窩部痛を自覚して当院救急搬送,胸腹部CTにて血栓閉塞型の急性大動脈解離(DeBakey II,Stanford A)と診断し同日緊急手術となった.右大腿動脈送血,左右上大静脈および下大静脈脱血で人工心肺確立し,大動脈を腕頭動脈直下健常部で遮断,上行大動脈の内膜亀裂を切除した.吻合部は中枢・末梢ともに外膜側にフェルトストリップを用いて24 mm人工血管で上行置換術を施行した.術中,循環動態は安定しており,送血圧の上昇や末梢動脈圧低下等は認めず,血液生化学検査異常もなく,尿量も確保されていた.術後ICUに入室し肝腎機能障害の経時的な増悪を認め,画像所見にてIII型解離と診断した.II型急性解離上行置換術周術期にIII型解離を発症した稀な1例を経験し,保存的加療にて軽快したので報告する.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top