日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
Penetrating atherosclerotic ulcerによる腹部大動脈疾患
佐藤 真剛今井 章人坂本 裕昭佐々木 昭暢渡辺 泰徳軸屋 智昭
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 19 巻 7 号 p. 723-730

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抄録

【背景】PAUは血管壁に潰瘍を伴う動脈硬化性病変において,その潰瘍が内膜・中膜へと進展し,内弾性板を穿破するものと定義されている.動脈硬化の強い高齢者に起こりやすく,胸部とくに下行大動脈に発症することが多いとされているが,動脈硬化性変化は腹部大動脈にも同様に起こりやすいことが報告されている.【目的】PAUが原因と考えられる腹部大動脈疾患について臨床的特徴・自然歴・治療法について検討する.【対象】2006年4月から2009年3月までに2施設にて手術を行った腹部大動脈疾患症例67症例の内PAUが原因と診断された腹部大動脈疾患は4例(男性4例・平均年齢63.5歳).これに過去15年間に腹部大動脈に発症したPAU・腹部限局解離・腹部大動脈破裂についての英文報告で検索しえた61症例を合わせた65症例を加え検討を行った.【結果】53%の症例で自覚症状を認めた;腹痛や腰痛40%(n=26),ショック症状4.6%(n=3),PAUが塞栓源である下肢塞栓症9.2%(n=6).他方全くの無症状で発見されたものが40%(n=26)であった.15症例(23%)に破裂を認めた.診断の多くはCTにてなされたが(88%,n=57),血管造影やMRIも診断に有用であった.7症例は内科的治療にて経過観察され,58症例(89%)に積極的治療が行われた;open surgery 46%(n=30),stent graft 43%(n=28).2例の周術期死亡を認めた.【結論】PAUは腹部大動脈にも起こりえる病態であり,腹部大動脈限局解離や嚢状動脈瘤,動脈破裂の原因となる.手術のmorbidityやmortalityは良好であり,自覚症状を有する場合,画像上急速に増悪する場合などは早期の加療が必要と考える.

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