日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
尺骨動脈-尺側皮静脈シャントの臨床検討
浦山 博
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2010 年 19 巻 7 号 p. 731-736

詳細
抄録

【目的】前腕での橈骨動脈-橈側皮静脈シャントは手術手技も容易で開存率も高く,標準術式となっている.一方,尺骨動脈-尺側皮静脈シャントは動脈,静脈ともに細く,前腕の背側から静脈を遊離して吻合する必要がある.したがって橈骨動脈-橈側皮静脈シャントが行えなくなったら,肘部でのシャントを選択することも多い.われわれは超音波検査にて吻合可能な血管があった場合は前腕での尺骨動脈-尺側皮静脈シャントを選択肢としてきた.今回,その臨床成績を検討した.【対象・方法】過去9年間に当院で行った内シャント手術症例552例のうち,前腕での尺骨動脈-尺側皮静脈シャントは44例(8%)であった.年齢は35歳から87歳(中央値68歳),男30人,女14人であった.観察期間は1日から106カ月(中央値4カ月)であり,シャントの開存率はKaplan-Meier法を用いて算出した.【成績】術後2人が1カ月以内に他病死した.静脈高血圧,盗血症候群は認めなかった.21人にシャント狭窄・閉塞を認めた.一次開存率は1年で45.1%,4年で27.0%であった.5人のシャント狭窄・閉塞に対して1回から7回のカテーテル拡張術が施行された.二次開存率は1年で51.6%,4年で41.3%であった.【結語】 尺骨動脈-尺側皮静脈シャントは橈骨動脈-橈側皮静脈シャントに比べて開存率は低いが,長期に上肢でのシャントを続けていくために肘部でのシャントを選択する前に考慮すべき術式と思われた.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top