症例は56歳の男性で腹部大動脈十二指腸瘻と診断され,Y字型人工血管による腹部動脈瘤置換術,十二指腸穿孔部の縫合閉鎖と大網充填術を行った.術後に瘻孔再発による人工血管感染を起こしたため人工血管を抜去,瘻孔の再閉鎖と腋窩-大腿動脈バイパス術を行った.発熱もなく順調に経過していたが,再手術後3年ほどして突然の腹腔内出血で搬送された.腹部大動脈断端からの出血を疑い胸腹部斜切開による解剖学的再建法で胸腹部大動脈置換術を行った.術後は対麻痺や感染兆候はなく順調に経過している.感染を合併した2回の開腹による動脈手術後に起きた腹部大動脈断端破裂に対して,本法は危険性が高いものの有用な方法と思われた.