抄録
【目的】透析患者の予後改善に伴い,長期維持透析の患者が増加している.バスキュラーアクセスは自己血管による内シャントが第一選択となるが,透析歴の長期化や透析患者の高齢化・複雑化により,自己血管での内シャント作成が困難なため透析用人工血管を移植せざるを得ない症例もある.透析用人工血管はさまざまな種類があるが,当科では早期穿刺が可能な人工血管の使用を優先しており,その開存成績を調べた.【方法】2006年7月から2009年11月の間で,当科において移植した早期穿刺可能なTHORATEC®(以下ソラテックと記載)とADVANTA PTFEグラフトVXT®(以下アドバンタと記載)の2種類の人工血管について開存成績を比較検討した.手術は全身麻酔下で行い,人工血管を皮下に通した後に動脈・静脈へ端側吻合した.【結果】対象期間中に移植された人工血管はソラテック39本,アドバンタ27本であった.患者平均年齢はソラテック71.3歳,アドバンタ68.7歳.調査期間中にソラテック群は死亡18例,追跡不能2例,アドバンタ群では9例で死亡を認めた.移植後に治療を介入していない状態を一次開存,血栓除去術や経皮的血管形成術などの治療介入を要したが救済可能であった状態を二次開存として累積開存率を求めると,一次開存率はソラテック群1年37.2%,2年23.2%,アドバンタ群1年72.5%,2年60.4%(p=0.0098).二次開存率はソラテック群1年67.5%,2年67.5%,アドバンタ群1年96.3%,2年96.3%であり(p=0.0118),アドバンタ群で有意に良好であった.初穿刺までの期間はソラテック群中央値3日,アドバンタ群9日であり,ソラテック群が早期に穿刺可能であった(p=0.0044).【結論】早期穿刺可能な透析用人工血管としてのアドバンタは一次・二次開存成績が優れていることが示唆された.