日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腎動脈下腹部大動脈瘤に対する小開腹手術の検討
末澤 孝徳青木 淳峰 良成
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キーワード: 腹部大動脈瘤, 小開腹
ジャーナル オープンアクセス

2011 年 20 巻 3 号 p. 647-652

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抄録

【目的】腎動脈下腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm; AAA)に対する小開腹手術は,腸管操作の減少,創部痛の軽減などの点から低侵襲性になることが期待されるが,術野の展開に特殊な器械を用いる場合が多く,普及しにくい現状がある.当院では通常の開創器に加え,Kent牽引開創器(高砂医科工業,東京)やターニケットといった消化器外科や心臓血管外科でよく使われる器械を用いて小開腹手術を行っている.今回われわれは小開腹によるAAAの手術が従来のfull laparotomyによる手術に比べ,低侵襲であるかどうかを検討した.【方法】2006年1月から2009年11月までに,腎動脈下腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術を行った75歳未満の症例(38例)を対象とした.そのうち剣状突起下から恥骨上縁まで皮膚切開をおいた症例(C群)は21例で,小開腹下(13±1 cm)に手術を行った症例(M群)は17例であった.【結果】両群間で年齢,男女比,基礎疾患に差はなく,両群で入院死亡はなかった.腎動脈上遮断症例数(M群;41%,C群;24%,P=0.25),内腸骨動脈再建症例数(M群;35%,C群;24%,P=0.44)に差はなく,セルセーバ返血量にも差はなかった.M群で手術時間,胃管留置期間,維持輸液期間が短く,飲水開始,固形食開始,離床が早く,入院日数が短い傾向にあった.【結論】小開腹手術は特殊な器械を用いなくても施行可能であり,full laparotomyによる手術に比し手術操作が煩雑になることなく早期の離床や経口摂取につながり,より低侵襲と思われた.

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