2011 年 20 巻 3 号 p. 691-695
76歳,女性.3カ月前から血痰出現しCT検査にて下行大動脈に仮性瘤を認め,ステントグラフト内挿術を施行した.術後3カ月後,吐血にて入院,胃潰瘍からの出血で内視鏡的に止血術施行された.その1週間後,再度吐血あり,内視鏡施行されるも明らかな出血源は認めず,CTにて下行瘤の拡大と発熱,炎症反応の増大,血液培養から黄色ブドウ球菌を認め感染性大動脈瘤による肺内穿破の診断にて入院,ステントグラフト抜去術,リファンピシン浸漬人工血管にて下行大動脈人工血管置換術,左肺部分切除術施行した.術後33日目腰痛あり歩行困難となりMRIにて腰椎の硬膜外膿瘍を確認した.ドレナージ術施行され,歩行可能となり術後190日目に退院となった.退院後1年半経過するが,感染の再燃を認めていない.ステントグラフトの低侵襲性から安易に適応される傾向にあるが,適応に関して慎重になるべきであると考えられた.