日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
重症虚血肢の集学的治療と治療戦略
正木 久男田淵 篤柚木 靖弘久保 裕司西川 幸作滝内 宏樹種本 和雄
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2011 年 20 巻 7 号 p. 905-911

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抄録
【目的】閉塞性動脈硬化症(ASO)の重症虚血肢に対して施行した各種治療成績をもとに治療戦略を明らかにする.【対象および方法】1995年5月から2009年7月までに当科で入院治療した重症虚血肢292例318肢を対象とした.年齢42–92歳,平均73歳,男性226例,女性66例で,治療の内訳は,バイパス167例(バイパス単独149例,血栓内膜摘除との併用10例,血管内治療との併用6例,腰部交感神経切除との併用2例),血栓内膜摘除と血管内治療の併用4例,血管内治療単独19例,腰部交感神経切除単独6例,薬物療法57例,血管新生療法4例,大切断31例,その他4例で治療成績につき検討した.P3 risk scoreも測定した.さらに治療前後には経皮的酸素分圧(tcPO2)ないし皮膚灌流圧(SPP)を測定し重症度評価を行った.【結果】血行再建を施行した症例の救肢率は2年87%であった.1年救肢率でP3 risk scoreが3以下の低リスクグループで96%,4–7の中等度リスクグループ88%,8以上の高リスクグループ66%であった.血行再建群の病院死亡率は3.2%ですべてバイパス群であった.潰瘍症例で,治療後にtcPO2ないしSPPが30 mmHg以上であった144例中感染例4例を除いて,潰瘍は治癒した.20–30 mmHgの5例中4例では潰瘍は治癒せず大切断となった.20 mmHg未満の6例ではすべて潰瘍は治癒せず結局大切断となった.【結語】tcPO2ないしSPPが30 mmHg以上であれば感染例を除いて潰瘍は治癒するが,30 mmHg未満であれば積極的に追加の血行再建に努める.P3 risk scoreは,救肢率の予測に有用であった.全身状態不良な人には,可能であれば血管内治療や血管内治療とのハイブリッド治療を行い,十分な周術期管理とともに救肢および手術死亡率の改善に努めることが重要である.
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