日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
チーム医療による難治性足潰瘍の治療成績の検討
井野 康清川 兼輔赤岩 圭一石田 勝古山 正小野原 俊博
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 20 巻 7 号 p. 913-920

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抄録

【目的】難治性足潰瘍に対しては,血管外科や代謝内科などの関連各科とチームで集学的治療を行うことが必要である.形成外科が関わった難治性足潰瘍を有する患者の治療成績について検討した.【方法】当科で治療を行った難治性足潰瘍を有する患者73例79肢について,潰瘍周囲の皮膚灌流圧(skin perfusion pressure; SPP)を測定して血行再建による血流改善の評価および創に治癒を検討した.SPPが45 mmHg未満を血行障害あり(PAD群),45 mmHg以上を血行障害なし(No-PAD群)とした.潰瘍に対する局所治療として,創内持続陰圧洗浄療法や持続陰圧閉鎖療法等を用いた.【結果】PAD群(52例58肢)とNo-PAD(21例21肢)群とを比較し,性別,糖尿病合併,維持透析の頻度に有意差はなかった.PAD群66%,No-PAD群81%で潰瘍の治癒が得られ,治癒率に差はなかった.PAD群で37例41肢に血行再建を行った(血行再建群).術後の足背および足底のSPPは,それぞれ,55.6±18.7 mmHgおよび56.3±22.4 mmHgであり,術前より有意に増加し,31肢中25肢(81%)で足部以下での血流改善を認めた.血行再建群66%,非血行再建群59%で潰瘍の治癒が得られた.血行再建群において,維持透析,感染,SPPの改善の有無が,治癒率に影響していた.主たる再建手技では,バイパス群(83%)が血管内治療(EVT)群(52%)より治癒率は高かったが,有意差はなかった.全41肢の救肢率は,1年83%であった.治癒が得られた症例では,観察期間内に肢切断に至った症例はなかった.再建動脈の一次開存率は1年70%であり,バイパス術(1年87%)と比較し,EVTの一次開存率(1年58%)は低かったが,有意差はなかった.【結論】血管外科による血行再建術と積極的な形成外科的処置を用いることにより難治性足潰瘍の妥当な治癒率が得られた.すなわち,複数科によるフットケアチーム医療は,創の治癒率をあげ,大切断を少なくする上で有効な手段であると考えられた.

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