抄録
腹部大動脈縮窄症(mid-aortic syndrome)は,小児期に発症する稀な疾患であり,薬剤抵抗性の高血圧や腎機能障害,脳血管障害の合併を認め,外科的治療を必要とすることが多い.しかし,外科的治療介入時期の決定が難しく,治療方針に苦慮する疾患である.症例は生後1カ月時に心雑音,上下肢血圧差を指摘され,magnetic resonance angiography(MRA)および血管造影検査で腹部大動脈縮窄症と診断された.利尿剤,降圧剤の内服治療が導入されたが薬剤抵抗性高血圧を認め,3歳時の血管造影検査では狭窄部は大動脈閉塞へ進行していたため,4歳時に手術を施行した.手術は,8 mmのring付きePTFE graftを用いて,上行大動脈から下腸間膜動脈分岐部レベルの腹部大動脈へバイパス術を施行した.術後の経過は良好であり,報告する.