日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
弓部置換術後に脳ヘルニアを発症したStanford A型急性大動脈解離の1例
牧野 裕佐藤 公治杉木 孝司村上 達哉
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 21 巻 1 号 p. 43-45

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抄録

Stanford A型解離は予後不良の疾患である.さらに分枝虚血を伴った場合,早期死亡30~50%と報告されている.今回われわれは腕頭動脈の虚血を伴うA型解離に対し弓部置換術を行ったが術後脳ヘルニアを発症し救命できなかった症例を経験した.症例は63歳女性.当初脳梗塞の診断で入院したが第二病日に意識消失,左共同偏視を認めCTで大動脈解離の診断となった.CTでは腕頭動脈が解離腔により圧排されていた.意識の改善傾向を認めたため緊急で弓部置換術を行った.術後一時意識は回復したものの,徐々に意識レベル低下.CTで広範な脳浮腫,脳ヘルニアを認め術後9日目に死亡した.広範な脳梗塞を伴った場合,浮腫改善まで待ち待機的に手術を行うか,待機できない場合は,頭蓋内外減圧や,総頸動脈を結紮するといった工夫が必要と考えられた.

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