日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
救命救急センターにおける外傷性胸部大動脈損傷の治療成績の評価
岡田 昌彦亀崎 真三上 学大倉 淑寛山川 潤杉山 和宏濱邊 祐一
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2012 年 21 巻 1 号 p. 5-9

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抄録

【目的】外傷性胸部大動脈損傷は,迅速な治療が必要な致死的外傷であり,われわれが救命救急センターで経験した26例の患者因子と生命予後との関連を検討した.【方法】1999年から2009年までに墨東病院救命救急センターに搬送され,TTARと診断した26例を対象として患者因子や合併損傷からinjury severity score(ISS)やprobability of survival(Ps)などの外傷パラメーターと実際のoutcomeとを照らし合わせて後方視的に検討した.【結果】自験例26例のうち多発外傷治療を完遂し得たものは13例で,そのうち大動脈修復手術は,緊急で7例,待機で5例に行い10例が生存退院しており,大動脈修復術まで行うことのできた症例の予後は比較的良好であった.一方,来院後に心肺停止となり治療を完遂できなかったものが13例で全例死亡したが,そのうち受傷から2時間以内の早期のものが11例と大半を占めた.解剖学的重症度のISSは有意に死亡例で高値(P=0.007)を示しており,四肢・脊椎・骨盤損傷例のISSは,有意差はなかった(P=0.077)が,骨盤骨折合併に死亡例も多く予後を悪化させる傾向にあった.このため,当科では,重症骨盤骨折合併例に対して,始めに短時間で骨盤創外固定を行い,その後,連続してTTAR修復を行うストラテジーで治療を行い有効であった.TRISS法で算出されるPsは,予後との強い相関(P=0.007)が認められ,TTARにおける侵襲の評価においても非常に有用であった.【結論】TTARは,受傷後早期に出血死するリスクが高いため,ISSやPsにより外傷侵襲を評価したうえで,合併損傷とともに可及的速やかな修復を行うことが予後を改善するために有用であると思われた.

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