抄録
【目的】偽腔閉塞型Stanford A型解離の治療方針は手術すべきか,保存療法か,未だ統一されていない.今回われわれは,当院で経験した偽腔閉塞型Stanford A型解離の経過から治療方針を検討した.【対象・方法】2002年2月から2010年10月までに加療したStanford A型偽腔閉塞型急性大動脈解離20例を対象とした.発症時および経過中手術適応となった群と,遠隔期まで手術適応とならなかった群を比較検討した.【結果】発症時上行大動脈径は手術適応(-)群42.5±5.6(35–48)mm,手術適応(+)群49.3±4.8(40–60)mmで手術適応(+)群が有意に大きかった.エントリーやulcer-like projection(ULP)が上行弓部大動脈に存在するものは手術適応(+)群で有意に多かった.一方,偽腔の厚さは両郡間に有意差は認められなかった.【考察】再解離した症例の手術成績は不良のため,ハイリスク症例は積極的に手術する必要がある.とくに,上行大動脈径50 mm以上,エントリーが上行弓部に存在するものは準緊急的に手術する必要がある.