日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術および人工血管置換術の術後腎機能に及ぼす影響に関する検討
井上 有方福田 宏嗣吉龍 正雄山田 靖之柴崎 郁子桒田 俊之堀 貴行小川 博永土屋 豪清水 理葉
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2012 年 21 巻 5 号 p. 641-646

詳細
抄録
要  旨:【目的】近年,腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(EVAR)が普及しているが,腎機能障害例に対し術中・術後造影剤の影響を考慮しEVARか,人工血管置換術(GR)にするか悩む症例も少なくない.今回EVARとGRで術後腎機能に対する影響を比較検討した.【方法】2008年8月から2009年10月の待機症例,GR 25例(男23,女2),EVAR 25例(男23,女2).術前透析患者は除外した.動脈瘤はすべてinfra renal typeで形態的にEVAR可能な症例は腎機能にかかわらずEVARを施行した.GRは全例腎動脈下遮断で施行した.腎機能障害EVAR症例は術前後に補液治療を施行,術中造影剤も40~50 ml程度にした.全患者の推定糸球体濾過量(eGFR)から日本腎臓病学会の慢性腎臓病(CKD)stage分類(stage 1-4)をし術前後で比較した.自然経過でもeGFRが低下するため術後eGFR 20%以上の低下を有意とした.【結果】術前後CKD stage(前:後)はGR群:stage 1=3 : 1,stage 2=4 : 7,stage 3=16 : 13,stage 4=2 : 4,stage 5=0 : 0.悪化例は6例(24%).EVAR群:stage 1=1 : 2,stage 2=15 : 14,stage 3=5 : 6,stage 4=4 : 2,stage 5=0 : 1.悪化例は1例(4%).術後eGFR 20%以上低下例はGR群6例(24%),EVAR群2例(8%)とGR群で有意に多かった.【結論】腎機能障害例でも術前後に補液治療を行い,造影剤を最小にすることでEVAR可能と考えられた.
著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top