日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
合併症を発症した急性大動脈解離に対する緊急ステントグラフト内挿術の検討
栗本 義彦柳清 洋佑上原 麻由子前田 俊之宇塚 武司小柳 哲也伊藤 寿朗川原田 修義浅井 康文樋上 哲哉
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2012 年 21 巻 5 号 p. 647-652

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抄録

要  旨:【目的】合併症を発症した急性大動脈解離に対して施行した緊急ステントグラフト内挿術(TEVAR)の有用性を報告する.【方法】2003年より2010年において急性大動脈解離に対して施行した緊急TEAVR 20例を対象とした.使用したステントグラフト(SG)は開窓または末梢側をtaperさせた人工血管によるhand-madeを中心に用いたが,症例により企業製SGも使用した.【結果】20例の平均年齢は69.7歳(39~82),男性16例(80%),IIIa型7例,IIIb型8例,IIIbR型5例であり,治療対象合併症は破裂10例(50%),切迫破裂5例(25%),臓器下肢虚血6例(破裂重複1例含む)であった.早期死亡はIIIb型およびIIIbR型破裂の2例(10%)で,82歳男性がリーク残存しTEVAR後8時間で人工血管置換術へ移行し同日死亡,腸管下肢虚血合併の79歳男性が手術翌日に再破裂死亡となった.左鎖骨下動脈(LSA)解離合併IIIb型腎下肢虚血例でLSA温存TEVAR後LSA灌流領域脳梗塞を生じた(5%).術後脊髄虚血は認めなかった.下肢虚血後8時間と10時間でTEVAR施行した2例で腸骨動脈偽腔がすでに血栓化しており大腿動脈へのバイパス術を要した.遠隔期にIIIa型の86%で偽腔消失を認めた.術後5年生存率,大動脈関連死回避率,大動脈関連イベント回避率は73.5%,100%,84.4%と良好であった.【結論】合併症を発生した急性大動脈解離に対するTEVARは有用な治療法であるが,IIIb型破裂例はリエントリーからの血流が残存するため適応には慎重を要する.

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