2012 年 21 巻 5 号 p. 679-682
要 旨:鈍的外傷後遠隔期に発症した仮性動脈瘤を伴う前脛骨動静脈瘻は極めて稀である.症例は38歳の男性.100 kg超の鉄板の下敷きになり左膝,下腿を挫傷.脛骨・腓骨近位端骨折を認め,整形外科でプレート固定を施行し,20カ月後にプレート除去を行った.その2カ月後に左下腿前面に拍動性腫瘤と疼痛を認め連続性雑音が聴取され,MRIにて前脛骨動脈に動脈瘤を認めたため,血管外科紹介となった.血管造影では,左前脛骨動脈に仮性動脈瘤と多発する動静脈瘻が確認された.腫瘤は増大傾向で,疼痛も増悪していたため,まず外科的に仮性動脈瘤の破裂孔閉鎖を行った.1カ月後,残存した動静脈瘻に対して血管内塞栓術(コイル塞栓)を施行し治癒できた.本症例の発見時の自覚症状は仮性動脈瘤による疼痛としびれであったが,発症機転としては動静脈瘻を有する前脛骨動脈の一部が瘤化し,その一部が破れて仮性瘤を形成したものと考えられた.