抄録
要 旨:症例は77歳男性で1987年に閉塞性動脈硬化症に対してDacron製Y型人工血管を用いた血管移植術を受けた.約16年後に両側鼠径部の膨隆を自覚して来院し,両側人工血管瘤の診断で緊急手術となった.術中所見では両側ともに鼠径通過部で人工血管が菲薄化して最大径50 mmに拡張し,前壁内側が破裂して血腫を形成していた.いずれも末梢側吻合部には異常はなかった.菲薄部人工血管を切除してHemashield woven Dacron graft(径8 mm)で部分置換した.グラフト破裂の原因は鼠径部の機械的外力が持続的に加わることによる人工血管自体の繊維の材質劣化と考えられた.Y型人工血管移植後遠隔期の両脚部同時破裂はまれなため報告する.