2012 年 21 巻 6 号 p. 737-740
要 旨:症例は25歳の男性.大動脈縮窄症に対して2歳時に人工血管置換術,14歳時に上行-下行大動脈バイパス術,24歳時に人工血管感染に対して人工血管抜去および大網充填を行った.感染治癒後,弓部大動脈~胸部下行大動脈の径は10 mmで,上下肢圧較差60 mmHg認めたため,全弓部置換術および胸部下行大動脈バイパス術を行った.手術は大動脈の損傷を避けるため,超低体温循環停止下にaortic no touch techniqueを用いて行った.さらに脊髄保護の観点から大動脈瘤ナビゲーションシステムを用いて癒着剥離を最小限にとどめ,術式を工夫した.対麻痺等の合併症もなく,降圧薬内服も不要となり,術後20日で退院となった.本術式は遺残大動脈縮窄症の再手術の有効な選択肢の一つと考えられた.