日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
中期遠隔成績よりみた悪性疾患合併患者に対する腹部大動脈ステントグラフト内挿術の適応
氏平 功祐森下 清文馬場 俊雄大堀 俊介佐賀 俊文馬渡 徹
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2012 年 21 巻 7 号 p. 763-768

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抄録
要  旨:【目的】腹部大動脈ステントグラフト内挿術(EVAR)の普及に伴い,腹部大動脈瘤(AAA)に悪性疾患を合併した患者にもとくに適応を制限することなくEVARを施行してきた.中期成績の検討からその是非を報告する.【方法】2007年4月から2011年4月までに当科で施行したEVAR 159例を対象とした.悪性疾患合併22例をM群,非合併137例をN群とし中期遠隔成績を比較した.平均観察期間はM群:15.0±2.1カ月,N群:16.3±1.0カ月だった.群間で悪性疾患の合併以外に患者背景の差はなかった.【結果】術後合併症はM群4例(18.1%),N群26例(19.0%)で群間に有意差はなかった.生存率は術後1年でM群77.4±10.2%,N群93.7±2.3%,術後3年でM群50.8±14.3%,N群72.3±9.4%であった(p=0.012).観察期間中の全死亡数は21例で9例は悪性疾患が原因だった.M群は7例死亡し6例(85.7%,Stage II:1例,III:4例,IV:1例)はEVAR施行時の悪性疾患が原因であった.大血管疾患関連死はなかった.【結論】悪性疾患合併患者に対するEVARの中期成績は容認できるものであった.しかし当科では今回の研究結果を踏まえ,Stage III以上の患者は長期生存が望めないことから,悪性疾患を合併したAAA症例に対し,(1)原則EVARを第一選択としAAAの治療を行う.(2)Stage I,IIの悪性疾患に対しては通常通りの適応とし,Stage III,IVに対しては原則として切迫破裂もしくは破裂症例のみに適応を制限する方針を採っている.
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