抄録
要 旨:大動脈気管瘻は,胸部大動脈手術後の重篤な合併症のひとつである.今回,大動脈気管瘻に対して開胸手術を行い良好な結果を得た.症例は62歳,男性.4年前に上行弓部下行置換術を受け,1年前に仮性瘤を合併しステントグラフト留置にて治癒していた.今回,喀血を主訴に受診.胸部CTでステントグラフト周囲にfree airを認めた.保存的治療が奏効せず,手術を施行した.手術は部分体外循環下に,遠位弓部および下行大動脈を遮断・切開した.ステントグラフトを抜去した後,下行置換,大網充填を施行した.術後経過は良好で合併症なく退院となった.大動脈気管瘻の多くはステントグラフト内挿術が有効な治療手段であるが,原因によってはステントグラフトのみでは治癒しえない場合があり,開胸手術が必要な症例がある.そのような症例であっても,二期的手術を考慮しステントグラフトを留置することは手術中の大出血の予防に関しても有用である.