2013 年 22 巻 1 号 p. 1-6
要 旨:上腕レベル尺側皮静脈転位(basilic vein transposition; BVT)によるバスキュラーアクセス(VA)の経験と早期成績ついて報告する.症例は2007年10月~2011年2月に上腕レベルBVTによるVAを作成した27例(46~91歳,平均72歳,男:女=8 : 19)を対象とした.初回手術例3例,再手術例24例で,BVT選択理由は前腕表在静脈不良:17例,VA感染:5例,その他:5例であった.BVTは全例上腕動脈をinflowとし,尺側皮静脈を上腕レベルで上腕前面へ一期的転位表在化し作成した.27例中24例(88.9%)で使用可能であった.術後6カ月の生存率は80.9%,術後1年の生存率は76.7%であった.術後1年以内のinterventionあるいは外科的血栓除去術を24例中4例(16.7%)に行った.1例で術後約4カ月目に透析アクセス関連盗血症候群を認め,外科的シャント静脈縫合縫縮にて血流調整を行った.術後6カ月のprimary patency(PP)78.9%,assisted primary patency(APP)90.0%,術後1年のPP 70.0%,APP 85.0%であった.前腕VA作成困難症例や人工血管シャント感染症例に対して,BVTによるVAは早期から十分な血流が確保できる有効なVAであると考えられた.